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釧路地方裁判所 昭和51年(わ)53号 判決 1976年10月19日

本籍

烏取県境港市渡町二一九七番地

住居

根室市琴平町八番地

漁業

木村文雄

昭和五年五月二七日生

右の者に対する所得税法違反被告事件につき当裁判所は、検察官松本和宏出席のうえ審理を遂げ、次のとおり判決する。

主文

被告人を懲役一年および罰金二〇〇〇万円に処する。

右罰金を完納することができないときは、金四万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。

本裁判確定の日から三年間右懲役刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人は、根室市琴平町八番地において、漁業を営んでいるものであるが、不正の行為により所得税を免れようと企て

第一  昭和四七年中における総所得額は七五、一八五、三五八円で、これに対する所得税額は四四、〇一〇、八〇〇円であるのにかかわらず、取引先と通謀のうえ漁獲物の水揚の一部を除外して簿外とするなどの行為により所得を秘匿したうえ、昭和四八年三月一五日、根室市大正町二番地所在の根室税務署において、同税務署長に対し、総所得額は六、九六五、六五〇円であって、これに対する所得税額が、一、六八八、五〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、正規の所得税額と申告税額との差額四二、三二二、三〇〇円について、法定の納付期限までに納付せず

第二  昭和四八年中における総所得金額は六七、七四六、一一七円で、これに対する所得税額は三八、五一七、八〇〇円であるのにかかわらず前同様の行為により所得を秘匿したうえ、昭和四九年三月一五日、前記根室税務署において、同税務署長に対し、総所得額は八、三七一、五一九円であって、これに対する所得税額が二、二〇五、一〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、正規の所得税額と申告税額との差額三六、三一二、七〇〇円について、法定の納付期限まで納付せず

もって、それぞれ不正の行為により、右差額金と同額の所得税を免れたものである。

(証拠の標目)

一、被告人の当公判廷における供述

一、被告人の検察官に対する供述調書(二通)

一、木村美稔子の大蔵事務官に対する質問てん末書(八通)および同人の検察官に対する供述調書(三通)

一、大沢鉄三、浜松慧祐、紺野功の検察官に対する各供述調書

一、品田清の大蔵事務官に対する質問てん末書(八通)および同人の検察官に対する供述調書(四通)

一、木村隆平、佐藤寿夫、鈴木真一、三宅勝久、江木保治、鳴瀬章三、川端元治各作成の証明書(但し、江木保治作成の証明書については判示第二の事実についてのみ)

一、滝沢哲也、奥村敏三、籠島毅各作成の上申書

一、浜松慧祐、紺野功、割方祐三、石川謙三、籠島毅、松本弘、大岡正男、大野和幸、折笠弥太郎、佐藤勝、佐々木末雄、島倉章、荒井功各作成の答申書(但し、松本弘作成の答申書は判事第一事実についてのみ、折笠弥太郎、佐藤勝、佐々木末雄、島倉章、荒井功作成の答申書は判示第二事実についてのみ)

一、大蔵事務官作成の昭和四九年九月一七日付(二通但し、作成年月日は決済年月日を指す。以下同じ。)、同月三〇日付、同年一〇月二五日付、昭和五〇年二月三日付、同月四日付、同年六月一〇日付、同月二六日付(但し、第二事実についてのみ)、同年一二月三日付(二通)、同月五日付(二通)、同月八日付、同月一六日付各調査事績報告書

一、大蔵事務官作成の現金有価証券等現在高確認書(二通)および同事務官作成の現金有価証券等の現在高検査てん末書(三通)

一、作田正、斎藤幸雄、佐々木キミ、新谷篤太郎、中田坊太郎、佐藤隆吉、板野真二、川崎藤一、片島久雄、島本勇、田中稔、小船井武次郎、小林克司、高木市蔵、谷正治、加賀谷保夫、北潟正雄、山本連城(二通)、八町新吾、福原忠男、江戸勝男、我妻忠三郎、油谷安男、中村啓次、布施慎一、逸見陽子、山本敏美、大野耕造、河合善次郎、島昭夫、今井顯治、山口末三、高澤由雄、小林正弘、酒井信一、小黒博之、大沢薫、須藤総一、中村トシ、川辺良輔、寿見光祐、奥実、加藤皓一、八田頼明、山中直義、上田渡、渡辺徳次、小門繁太郎、大倉キミ、小林一成、伊藤信夫各作成の「取引内容照会に対する回答」と題する書面(但し、小黒博之、大沢薫、須藤総一、中村トシ、川辺良輔、寿見光祐、奥実、加藤皓一、八田頼明、山中直義、上田渡、渡辺徳次、小門繁太郎、大倉キミ、小林一成、各作成に掛る書面については判示第二事実についてのみ、伊藤信夫作成に掛る書面については判事第一事実についてのみ)

一、大蔵事務官作成の「木村文雄に関する申告書の提出と起訴金額との差額について」と題する書面

(確定裁判)

被告人は、昭和五〇年九月一九日釧路地方裁判所で指定漁業の許可及び取締等に関する省令違反罪により懲役八月(四年間執行猶予)に処せられ、右裁判は同年一〇月四日確定したものであって、この事実は前科調書によって認める。

(法令の適用)

一、罰条 所得税法二三八条一項二項、一二〇条一項三号(懲役刑と罰金刑とを併科)

二、併合罪の処理 刑法四五条前段後段、五〇条、同法四七条本文、一〇条、四八条二項

三、労役場留置 刑法一八条

四、刑の執行猶予 刑法二五条一項

よって、主文のとおり判決する。

昭和五一年一一月二日

(裁判官 林豊)

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